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  • 2007年10月4日木曜日

    「台湾の声」【講演録】中国の対米戦略と日本

    【講演録】中国の対米戦略と日本

              京都大学教授 中西輝政氏の講演要旨

    2007年9月29日世界日報

    浸透する中国の日米分断工作

     京都大学教授の中西輝政氏は十九日、世界日報の読者でつくる「世日クラブ」(会長=近藤讓良・近藤プランニングス代表取締役)で「中国の対米戦略と日本」と題して講演した。中西氏は、中国による米政財界攻略やハリウッドを舞台にした日米分断工作をあぶり出す一方、中国が北京オリンピック後に、国内が制御不能に陥る可能性が大きいと分析。この上で、日米関係の重要性を強調した。講演の内容は以下の通り。

    -------------------------------------------------------------------------------- 「北の核」と「慰安婦」利用/ハリウッドで「南京」宣伝も

    ○————○

     なかにし・てるまさ 昭和22(1947)年、大阪府生まれ。国際政治学者。京都大学法学部卒、英ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。米スタンフォード大学客員研究員などを経て、現在、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。著書に『大英帝国衰亡史』『国民の文明史』など多数。

     ジュネーブで行った米ロ朝三カ国会議でアメリカのクリストファー・ヒル国務次官補が、北の金桂冠外務次官に北朝鮮に対するテロ支援国家の指定解除を約束した。アメリカが今、北朝鮮に接近する背景にはいったい何があるのだろうか。

     そこには「北京」が浮かび上がってくる。北朝鮮と北京の関係は、日本ではなかなか分かりにくい。中国は「金正日は常に北京に抵抗する厄介者で、頭を悩ませている」と言っているが、本当にそうなのか。

     金日成の朝鮮労働党は、実際には中国共産党がつくったものだ。そして、中国共産党満州省委員会が昭和三年から北朝鮮を行き来して、金日成の抗日パルチザン活動を背後から完全に掌握していた。今でも中国は北朝鮮の首根っこを押さえている。石油や食糧が中国から入らなければ北朝鮮は一カ月も持たない。そんな国が中国の言うことを全く聞かないで勝手に行動できるだろうか。

     中国は「北朝鮮は今われわれには全く手に負えない」ということをしきりに演出しているのではないか。北朝鮮の核実験の際には、中国は「二十分前に知らされた」と盛んに言っている。こうした様子を見れば、本当に「中国と北朝鮮は仲が悪いんだ」と受け取りたくなる。

     しかし、これらはいずれも「出来レース」の可能性がある。実はアメリカに「中朝分断ができる」と思わせることが、中国の狙いなのだ。狙い通り、アメリカは北朝鮮に核兵器を放棄させようと一生懸命接近し始めた。アメリカ主導で朝鮮半島を統一へ向けて動かせば、韓国、北朝鮮、日本、そして中国など東アジアに、大きなコストを払わずに影響力を及ぼすことができるという考えが、今のアメリカの対北朝鮮接近政策の基本にある。一方中国は、アメリカにそう思わせて、自らの力を付けるまで時間を稼ごうとしているわけだ。現在の北朝鮮問題は、米中関係が今後どうなるかという大きな視野を持たなければ、理解できない。

     アメリカの下院本会議での慰安婦決議を中心的に働き掛けていたマイク・ホンダ下院議員が中国から多額の資金を受けていたことが分かった。つまり、中国は北朝鮮の核問題などを利用してアメリカを北朝鮮に接近させる一方で、慰安婦問題で日米関係を分断させようと工作している。

     アメリカは今、中国を見る目を曇らされている。ウォール街にはいろんな形でチャイナ・マネーが入っている。ワシントンに大きな影響力を持つニューヨークの経済界や、あるいは世論に影響力を持つメディア界にもものすごい勢いでチャイナ・マネーが入っている。

     例えば、中国政策でアメリカ随一の影響力を持つ『フォーリン・アフェアーズ』という外交専門誌を出している「外交問題評議会」というシンクタンクがある。ここに投資しているグループにも、チャイナ・マネーがかなり入っているといわれている。確かに最近の論調はおかしい。胡錦濤の側近の鄭必堅という人が巻頭言で「中国はもはや平和に徹する国だ」と書いている。こんなことがアメリカの各分野で起きている。

     そして、今中国の対米戦略で大きな柱になっているのが「文化工作」だ。ハリウッドに注目し、盛んにプロダクションをつくっている。ハリウッドを握る者はアメリカ人の心を握る。例えば、「南京大虐殺七十周年」だと言って、盛んにアメリカのプロダクションに金をつぎ込み、南京事件のプロパガンダ映画を作っているのもその一環だ。われわれとしては、アメリカがチャイナ・マネー漬けになる可能性があることを看過できない。

     しかし、アメリカが日本と違う点は、チャイナ・マネーごときで国策が根底から変わる国ではないということだ。アメリカにはしっかりした防諜(ぼうちょう)機関がある。FBI(連邦捜査局)やDIA(国防情報局)という十九世紀にできた海軍情報部の伝統を引く中国監視機構があり、国内の政治家や学者も全部ウオッチしている。こうした防諜機能は世界のどの国にもあるが、日本にはもちろん無い。私は、共産主義の中国と付き合うには、日本にも情報の収集・管理システムが何より必要だと思う。

     ところで、今、北京オリンピック後に何が起こるかに関心が集まっている。今の中国の体質が持つ問題は、分かりやすく言えば「分かっちゃいるけど、やめられない」ということだ。

     中国の金持ちや役人たちは役所のカネを持ってきて株や不動産を買いまくっている。このため、株価は今年一月から八月までに五、六倍に跳ね上がった。IMF(国際通貨基金)もアジア開発銀行もはっきりと「中国はバブルだ」と警告している。だから、中国経済の「バブル崩壊」は意外と早いかもしれない。しかし、誰もバブル投資を「分かっちゃいるけど、やめられない」のだ。

    日米の信頼関係重要/価値観で中国より優位に

    ○————○  中国の食品や薬品の安全性が、日本でも問題になったが、健康問題や大気、川の汚染など環境にかかわる悪質な違法行為さえ政府は全く規制できない。強権を持っている共産党独裁政権なのになぜやめさせられないのか。これがまさに中国というものの本質だ。つまり、規則があっても「守る」ということを前提にしていないので、取り締まり機構が最初から設定されていない。

     そして、最も重要な点は、人民解放軍をコントロールする人間がいなくなったことだ。

     今年一月に中国軍は、人工衛星をミサイルで撃ち落とす実験をやった。中国軍部はいよいよ本格的に宇宙の覇権を目指し、「アメリカと戦争をしても勝てるぞ」ということを示すための大変危険な意味を持つ実験だ。米ロ両国でさえ一九八〇年代にやめた実験で、胡錦濤政権も中国脅威論を増幅させるに決まっているこんな実験はやりたくはない。しかし「止められない」のだ。

     また、三年前に中国の原子力潜水艦が石垣島と宮古島の間の日本の領海を侵犯した事件があった。この時小泉首相は海上警備行動を発令し、海上自衛隊の艦艇が三日三晩追跡した。この領海侵犯の指令は、上海に近い寧波海軍基地から海軍の司令官が外交部や政治指導部との連絡を取らないまま、直接原潜に出した。しかしこの司令官は"功績"を認められ、中国軍を動かす中国共産党中央軍事委員会の副主席に大抜擢(ばってき)された。これらのことから、政権が軍人に押さえ込まれていることが分かる。このように現在の中国は、あらゆる分野で国家の統制が利かない国になっている。

     われわれは、中国の対米戦略を見て、三つのことをしっかり知っておかなければならない。

     第一に、アメリカは中国に「たらし込まれる」危険はあるが、最後には必ず気が付く。むしろ注意すべきは日本だということだ。

     大国というのは最後には必ず冷厳に国益を優先する。しかし大国は普段は世界中の問題にかかわらざるを得ない。アメリカも中東問題があれば、対中、対北朝鮮政策を犠牲にする。われわれ日本人は今、アメリカという大国を見る目を試されている。ここで重要なのは、われわれはアメリカをあくまでも信頼すべきだということだ。いずれアメリカは目を覚ます。それが一日も早くなるよう、常に注意を喚起することだ。あきらめてはいけない。

     二つ目に大事なことは、日本が真の独立主権国家になって、外国に簡単に支配されない、あるいは国を売るような日本人が次々と現れるような国から脱皮しなければならないということだ。

     拉致被害者を取り戻すことは何より大切だ。しかし同時に、日本で行われていない議論がある。北朝鮮の工作員が簡単に入ってきて、どんどん拉致していった。もう二度と起こらないよう日本人の人権と国家の主権を護るための情報機関の力を整備しなければならない。

     三つ目は、価値観の問題だ。

     日本が中国に対して有している優位性はもはや何もないと言っていい。では、日本の究極的な優位は何か。それは自由と民主主義、人権といった普遍的な価値観だ。そして、社会の安定。中国では人権問題が山積して、どうにも解決できないでいる。国民の国家への本来的な帰属感は中国にはるかに勝っている。福田さんは、安倍さんが敷いた「価値観に基づく外交」を断絶させてはならない。

     北京オリンピックが終われば、ますます「制御できない中国」になることははっきりしている。だから、われわれはここ二、三年を大きな視野を持って、米中関係、そして日中関係を見ていく必要がある。

     最後に、やはり日米関係の重要性を確認しておきたい。

    『台湾の声』  http://www.emaga.com/info/3407.html

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