台湾研究フォーラム事務局長 古市 利雄
先々週、MSNメッセンジャー(インターネットを通じてコミュニケーションを するソフト)で知り合った台湾人から、変な勧誘を受けた。 それを簡約すると、
《来週の土曜日、15日、外国の友達と一緒にwe are the worldを歌うおもしろい イベントがあります。台中でやります。一人1000元の費用を払います。送り迎え 無料 台湾を国連に復帰させるイベントのなかのひとコーナーです》
最初は何のことだがわからなかったのだが、後にこれが野党・国民党が主催した 集会だとわかった。
注目してほしいのは、「1000元の費用を払います」という箇所。
国民党は金を出して動員している話は聞いていたが、まさか日本人の自分までもが 勧誘されるとは……。
ここで思い出すのは、2003年に台北で行われた「台湾正名運動(中国、中華という 名前から台湾へ名を正す運動)」のこと。
私を含めた多くの日本人が、自費で台湾まで行き参加したのだが、現地で「あの 日本人グループは金を受け取っている」と言われた。
噴飯ものだった。しかし国民党があのような動員を行っている背景があったから こそ、根拠のないあんな噂が自然と出てくるのだと、これでよく理解することがで きた。
与党・民進党が主催する集会なら、彼らの資金が乏しいこともあるが、このような ことがない。せいぜいが遠方から来る参加者のためにバスや、弁当を手配するぐらい。
それでも毎度、民進党の参加者の方がはるかに多いのである。この国連加盟の集会 も、同じ先々週の土曜日(15日)に行われたのだが、民進党は50万人、国民党は10万 人だった。
それに台湾をちゃんと理解している人なら、台湾を国連に「復帰」とは言わない。 台湾は未だかつて国連に議席をもったことはない。
おそらく現在台湾を実質統治している中華民国政府が、1971年まで国連に議席を 持っていたことからくる誤解なのだろう。
つまりこの勧誘をしてきた人のなかでは、台湾と中華民国が同じ概念となっている のだ。
中華民国というのは、国共内戦に敗れた国民党が、中国から台湾へ落ちのびた際に 持ち込んだ政府機構である。
それは外来政権であり、多くの台湾人を苦しめ、台湾を何も国際法的根拠をもた ない不法支配を続けていることを、この人は理解していないので、こうしたことを 言えるのだろう。
それが意図的なものか、国民党教育の影響なのかはわからないが、実際にこうした 台湾人が多いのが現状である。
中華民国という政府機構は、曲がりなりにも台湾を60年以上統治してきた。
だから「台湾=中華民国」という主張が、よほどの高い台湾人意識を持っていない 限り、受け入れられてしまうのだ。
国民党は現在の中華民国体制を支持している。2008年総統選に国民党から出馬する 馬英九氏は「私たちは中華民国の総統を選ぶのであって、もう一人の候補者が言う、 『台湾の総統』を選ぶのではない」と発言している。
台湾では長らく野党の存在が許されず国民党が唯一の政党であった。彼らは台湾に 37年に及ぶ世界一長い戒厳令をしき、「白色恐怖(テロ)」と呼ばれる言論弾圧を行 い、多くの人たちを処刑、投獄した。
何のことはない、現在の北朝鮮、中国と同じ、恐怖政治、独裁統治である。
特定アジアの国々ではないが、彼らは台湾人に対してまったくもって過去の清算を 行っていない。
こうした政党が支持されているかぎり、台湾の前途はまだまだ暗いのではないだろ うか。
『台湾の声』 http://www.emaga.com/info/3407.html
『日本之声』 http://groups.yahoo.com/group/nihonnokoe (Big5漢文)
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