国名を台湾共和国に改めて、台湾が国際社会の承認を得る絶好機到来 2011年 6月 宗像隆幸
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16、台湾のことを知れば、世界は台湾共和国の創建を支持する
人民自決の権利が最も基本的な人権であることは、すでに確立された国際法によって承認されている。しかも、台湾人民が自決権を行使して台湾共和国を創建することは、世界の利益と一致しているのである。世界の国々から承認される台湾共和国の誕生は、台湾人民が自分たち自身の主権独立国家を持つことであり、台湾の平和と安全も保障されることになるのだ。これだけ良いことばかりなのに、なぜそれができないのであろうか。
その最大の原因は、国際社会であまりにも台湾に関する事実が知られていないことである。基本的な台湾の過去と現状を知るだけで、世界の国々は台湾共和国の創建を支持するであろう。しかし、知らないことは支持できない。
世界で知られている台湾問題と言えば、台湾が大戦の起こり得る危険地帯であると言うことであろう。中国は「台湾は自国の領土であり、台湾を統一するためには武力行使も辞さない」と主張しており、米国は台湾防衛に協力することを公約しているから、米中戦争が起こり得ると思われているのである。このように認識している人々であっても、台湾の国名が中華民国であることさえ知らない人が多い。もし、彼等が次のような説明を聞いたら、どう考えるであろうか。
台湾の国名は中華民国(Republic of CHINA)である。国連憲章には「中華民国は安全保障理事会の常任理事国である」と書かれており、中華人民共和国の名称は国連憲章のどこにも書かれていないのに、中華民国に代わって中華人民共和国が安保理常任理事国の地位についている。これは、中華民国は滅亡して、その権利は中華人民共和国に継承された、と国連が断定しているからである。それでも台湾の世論の圧倒的多数は、「現状維持」すなわち国名のCHINAを守ることを支持している。これは、台湾人民が中国との統一を希望している証拠だ。中華民国の大統領(=総統)は、「中国大陸も中華民国の領土である」と主張している。中華民国は亡命政権に過ぎないのに、その大統領がこんな発言をしているのだから、中国が「台湾に対する武力行使を辞さない」と言うのは無理もなかろう。
台湾の実情を知らない人がこのような説明を聞いたら、それを真実と信じてしまうのではなかろうか。台湾と関係の深い米国の国務次官補であったウインストン・ロードでさえ、1995年に「台湾は『1つの中国政策』を堅持して、自由な国になることを自ら拒否している。台湾の政府は、台湾が中国と分離した国家である事を希望していない」と語ったのである。あれから16年も経っているのに、台湾は今なお中華民国の国名を守り、「1つの中国政策」を堅持しているのだ。民主進歩党でさえ、「中華民国は主権独立国家である」と、国際社会では全く通用しない事を主張している。国際社会で承認されてこそ、本物の主権独立国家である。国際法から見ても、台湾の法的地位は未定であり、台湾は中華民国の領土ではないから、中華民国に主権独立国家の資格はないのだ。
台湾人民の大多数が希望している「現状維持」は、台湾が中国に支配されない独立国家として存在している「現状」であって、台湾が国際社会で孤立している「現状」ではなかろう。民進党でさえ、台湾人民の多数意志を代表していないのである。大戦後、中国から台湾に来た占領政権の支配が長く続いたことが原因で、中国から来た人々とその子孫は台湾の人口の13パーセントに過ぎないのに、いまだに大きな力を持っている。現在、中国国民党を支配している彼等は、中国との「統一」を主張している。しかし、「統一」を希望している人々は台湾の人口の6パーセントもないのだから、彼等はごく少数の人々を代表しているに過ぎない。このような少数派が統治権を掌握している台湾は、民主主義国家と言えるのであろうか。
台湾では、中華民国の国名を変えたら、中国が攻撃してくる、と恐れている人が多い。しかし、中華民国を承認していない中国が、中華民国の国名変更を理由に武力を行使することは、全く筋が通らない。そんなことをしたら、中国は国際社会の厳しい批判と制裁を受けることになろう。他国の国名変更を戦争の理由にすることなど、国際社会が認めるはずがないのである。しかも、現在の軍事力では、まだ米国が中国を圧倒している。中国の武力による威嚇は、中国が台湾を支配下に置く日が来るまで、台湾に中華民国の国名を守らせることが目的であろう。
米国も台湾に「現状維持」を要求しているから、国名変更は難しいと言う人も多い。しかし、なぜ国名変更が必要なのか、米国に十分な説明もしないで、そのようなことを言うのは、言い逃れに過ぎない。米国は、どこの国の民主化にも反対できない国なのだ。中華民国憲法は、中国で中国人によって制定された中国憲法である。民主主義の基本原則は、国民が自ら制定した法か、自分たちが選出した国会議員によって制定された法に従う事である。現在の台湾は、法的には全く非民主的な国家なのだ。台湾を民主化するためには、台湾人自身による台湾共和国憲法の制定が必要不可欠であることを説明すれば、米国政府は反対できないであろう。しかも台湾共和国の創建は、台湾を国際社会に承認される国家にすることだから、米国の国益とも完全に一致する。現在の米国は台湾関係法に基づいて一方的に台湾の防衛に協力しているので、「米国は中国の内政問題に干渉している」と誤解している人々も少なくない。台湾共和国が成立すれば、米国は台湾を承認して安全保障条約を締結する事も可能になるのである。
なぜ台湾には、台湾共和国の創建に躊躇している人々が多いのであろうか。そのような人々は、ぜひ鄭南榕のことを思い出して欲しい。まだ台湾独立を主張することが違法とされていた1987年に、鄭南榕は公開の場で「台湾は独立建国すべきである」と演説した。1988年末、鄭南榕は自分で編集・発行していた『自由時代』誌に、台湾独立建国聯盟主席であった許世楷が執筆した「台湾共和国憲法草案」を掲載した。台湾の高等検察庁は鄭南榕を叛乱罪容疑で召喚したが、彼は出頭を拒否して、1989年4月7日に壮烈な焼身自殺を遂げた。鄭南榕は、台湾人民に台湾共和国を創建する勇気を与えるために自決したのである。
鄭南榕が自決したのは、李登輝総統がまだ「ロボット総統」と呼ばれている時代であった。その後、次第に実権を掌握した李登輝総統は、強力な世論の支持と民進党の協力を背景に台湾の民主化を推進した。しかし、国民党の長老達の力がまだかなり強く、台湾憲法を制定できる状況ではなかったので、中華民国憲法の修正によって民主化を推進した。しかし、憲法修正では本当の民主化が不可能だった事を、後に李登輝も認めている。
2003年8月23日、台北市で李登輝を代表者とする「正名運動」の決起大会が開かれた。台湾の国家機関や公営企業の名称に付いている「中国」や「中華」を「台湾」に変えることも「正名運動」の目的であるが、その最大の目的は「中華民国」を「台湾共和国」に変えることである。この決起大会で李登輝は、「中華民国はすでに存在していない。私は12年間、中華民国の総統であった。しかし、中華民国はどこにあるのかと探したが、どこにも見当たらなかった。中華民国はとっくに中華人民共和国にとって代わられていた。台湾という正しい名称を名乗るのが、台湾国を正常化する道である」と語った。わずか3年前まで中華民国総統であった人物も、鄭南榕の主張が正しいことを認めたのである。台湾の独立と自由を守るためには、中華民国を廃棄する以外に道がないことを理解すれば、大多数の台湾人民も台湾共和国の創建に賛成するであろう。台湾に関する基本的な事実を知れば、世界の人々も台湾共和国の創建を支持することになる。大多数の台湾人民が理解できるように、台湾共和国の創建の必要性を説明すると同時に、世界の人々に台湾に関する基本的な事実を知らせることが、現在の急務である。
17、こうすれば、台湾共和国を創建できる
いかにして台湾共和国を創建するかは、そのために努力している台湾の人々が意見を出し合い、協議して決定すべきことであろう。1961年以来、私は台湾独立建国聯盟の1メンバーとして、台湾共和国の創建を目的として活動してきたので、皆様の参考になればと願い、以下に私の案を述べる次第である。
世界の国々が台湾共和国の創建を支持するようになるためには、少なくとも次のようなことを知って貰う必要があると思う。
台湾簡史
数千年来、南方系の人々が台湾に渡って来て住み着いた。彼等は台湾へ来た時期も部族も言葉も違い、部族ごとに台湾の各地に居住して、国家を形成しなかった。最初に台湾を支配した国家はオランダである。1624年に台湾に上陸したオランダ軍は、台湾南部を中心に37年間にわたって台湾を支配した。1644年に満州人の清朝は、明朝を滅ぼして中国を支配下に置いた。清朝に抵抗していた1部の中国人が、1661年にオランダ人を台湾から駆逐して、台湾を占領した。彼等は台湾を拠点として清朝に抵抗したが、1683年に清朝が台湾を占領した。1895年、日本との戦争に敗れた清朝は、台湾を日本に割譲した。1945年、第2次世界大戦で日本が敗北すると、マッカーサー連合国最高司令官は、蒋介石・中華民国総統に台湾の占領を命じた。台湾を占領した蒋介石は、一方的に台湾は中華民国の領土になったと宣言した。1949年、中国共産党は蒋介石を総司令とする中国国民党軍を敗北させて、中華人民共和国を創建した。中国国民党は、中国を追われたが、台湾の支配権は維持した。1951年、日本と戦った米国を中心とする連合国の大部分と日本の間でサンフランシスコ平和条約が締結され、日本は台湾に対する一切の権利を放棄したが、台湾の帰属は決定されなかったので、「台湾の法的地位は未定である」というのが、これらの国々の見解である。中華民国は中国の統治権を失なった後も、国際連合では安全保障理事会の常任理事国であったが、1971年に中華人民共和国が安保理常任理事国として国連に加盟した時、中華民国は国連から追放された。それまで中華民国を承認していた国々も、次々に中華人民共和国と国交を結び、中華民国と断交した。その結果、台湾は国際社会で孤立して、現在にいたっている。
台湾人民の願望は、自由で民主的な自分達自身の国家を創建する事である
1945年に中国国民党に占領されて以来、台湾人民は自由と民主主義を求めて国民党政権の専制独裁に抵抗した。国民党政権は、戒厳令を敷いて政府を批判する人々を弾圧し、政党の結成も禁じた。しかし、台湾人民は何万人もの犠牲者を出しながら民主化闘争を続け、1986年に民主進歩党を結成し、翌年には国民党政権も戒厳令を解除せざるを得なかった。1947年12月に施行された中華民国憲法は、半年後に施行を停止されたが、1991年にその凍結を解除する形で民主化が推進された。1992年には国会議員の総選挙が行われ、1996年には国民の直接選挙で総統が選出された。しかし、中華民国憲法は中国で中国人によって制定された中国憲法であり、この憲法を台湾に適用するのは民主主義の基本原則に反している。台湾人民の大多数は、台湾共和国憲法を制定して、自分達自身の自由で民主的な国家を創建することを熱望している。しかし、中国の威嚇と米国の「現状を変えるな」という圧力によって、台湾人民は中華民国憲法を維持させられてきた。国連がすでに滅亡したと認定している中華民国の国名と憲法を用いているために、台湾は世界の国々の承認を得ることができず、国際社会で孤立している。少なくとも民主主義国家は、台湾共和国を創建することによって、台湾の法的民主化を完成することに反対すべきではなかろう。台湾人民は、台湾共和国を創建することによって、世界の自由民主主義国家と連帯し、自由民主主義の防衛と拡大に尽力したいと願っている。
台湾共和国を創建するために、台湾では次のような運動を展開すべきではなかろうか。
人民自決運動
人民自決権は、国際法で全人類に保障された権利である。第2次世界大戦が終結した時、68か国しか存在しなかった主権独立国家が、今日では193か国に増えている。増加した125か国は、全て人民自決権の行使によって建国されたのである。台湾の場合、人民自決権を冒頭に掲げる国際人権規約が国内法化されたので、台湾人民はこの国内法でも自決権の行使を保障されている。2009年12月に国際人権規約が国内法になった時、馬英九総統は「台湾の国民1人1人がこの法律を引用できるようになった。この法律は、他の法律よりも優先的に適用される」と述べた。本来なら、国際人権規約の国内法化に賛成した馬総統も立法委員も、人民自決権を行使する公民投票には賛成しなければならないはずである。しかし、この公民投票を実現するためには、強力な世論の圧力が必要であろう。
公民投票を要求する署名運動を行なうのは、いかがであろうか。2004年2月28日台湾の人口の1割近い人々が、「人間の鎖」を作って「台湾イエス、中国ノー」を叫び、中国との統一に反対である意志表示を行なった。一定の時間に一定の場所に220万人もの人々が集まったのだから、いざという時の台湾人の団結力が証明されたのである。自分達自身の主権国家を創建するための署名運動だから、あの時の何倍もの人々の署名を期待できるのではなかろうか。
1日も早く国名変更を
中国は、東アジア(東南アジアを含む)から西太平洋までを覇権下に置くことを目標として、海空軍力を増強し、近隣諸国を脅かしている。南シナ海の大部分を自国の領海であると主張する中国は、南シナ海を「中国の核心的利益」と位置づけて、南シナ海の周辺諸国を武力で威圧している。東アジア・西太平洋諸国にとって、南シナ海を通るシーレーンは命綱あり、中国は南シナ海を支配することで、これらの国々を覇権下に収めようとしているのである。
中東の2つの戦争にエネルギーを奪われて、東アジアを等閑視していた米国が、やっとその危機に気づいて東アジアに戻ってきた。中国を「潜在敵国」と規定した米国は、中国の周辺諸国と軍事的協力関係を緊密化して、中国包囲網を形成しつつある。東南アジア諸国はいずれも軍事力を増強しているが、特に中国の隣国で南シナ海を通らなければ外国にも行けないベトナムは、2011年の軍事予算を前年比70パーセントも増額した。米国は、これらの国々に軍事援助を与え、共同軍事演習を繰り返している。
南シナ海の航行の自由を守るために、台湾は死活的に重要な地政学的地位を占めている。もし、中国が台湾を支配下におけば、南シナ海の出入口を支配できるからだ。台湾にとって、主権独立国家としての地位を獲得する絶好機である。台湾共和国を創建すれば、米国と南シナ海のシーレーンを命綱とする国々は、喜んで台湾を仲間に受け入れるであろう。台湾共和国の創建は、1日も早い方が望ましい。国際社会が台湾を主権独立国家として承認できないのは、台湾が中華民国を国名にしているからであって、世界の国々は台湾の憲法の内容にまで配慮している訳ではない。台湾共和国憲法の制定には時間を要すると思われるので、公民投票にかけるのは、次のような内容で良いのではなかろうか。
「台湾の国名を台湾共和国として、中華民国の国名を廃棄する。中華民国憲法の文章の中で『中華民国』と書かれている所は『台湾共和国』に改め、『台湾共和国』と矛盾する条項は凍結して、可能な限り早く台湾共和国憲法を制定する」
(完)