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  • 2014年9月19日金曜日

    「台湾の声」【台湾現地レポート】通敵叛国─前代未聞のスパイ事件は藪の中

    【台湾現地レポート】通敵叛国─前代未聞のスパイ事件は藪の中

    【エコノタイワン:9月号】

               迫田 勝敏(ジャーナリスト)



     前代未聞のとんでもない事件が起きた。中国政策を担当する行政院(内閣)大陸委員会(陸委
    会)が、同会副主任委員、張顕耀は「中国のスパイの疑い」と発表したのだ。中国の工作はそこま
    で進んでいたのか─と驚愕だが、張顕耀は真っ向から否定し、どうも単純な話ではなさそう。なに
    やら台湾現代史の新たな謎となりそうだ。

    ◆張顕耀、涙流して潔白言う

     事件を聞いて張治中を思い出した。張治中は半世紀以上も前の国共内戦時、蒋介石の四大腹心の
    一人で、中共軍と北京で和平交渉にも当たった。交渉は破談になったが、張治中は北京に残り、結
    局、共産党入り。実は共産党のスパイだった。何年も前から共産党と通じ、それを隠して、国民党
    軍の中将になり、新疆省政府主席も務めた。中国共産党の工作というのは凄い、と印象に残ってい
    た。

     張顕耀事件は出だしから不可解だ。陸委会は当初、「家庭の事情で辞職」と発表し「病気の母親
    の世話をするため」としたが、張顕耀は「辞めさせられたのだ」と否定。すると陸委会は「職務
    上、国家の安全に関わる問題があった」とした。これを受け、法務部調査局は「国防以外の機密漏
    洩」とし、「張顕耀は中国のスパイの可能性」とまで明言した。「通敵叛国」(敵に通じて国に叛
    乱)というわけだ。

     対する張顕耀はテレビ番組に出て、涙を流して身の潔白を訴え、一方で行政院の仕打ちを「マ
    フィアが裏切り者に報復をするようなもので、非常に怖い」と表情を強張らせた。だが、真相は
    「すでに遺書に書いた」とだけ述べ、具体的なことは何も話さなかった。

    ◆中国に交渉の底線も教える

     台湾では過去、何人もの要人がスパイとして処刑されているが、多くは軍事機密漏洩の軍人だっ
    た。文官でこれほどの高官は初めて。「中華民国」が台湾に移って以来、最高幹部のスパイ事件に
    なる。中国との交渉の「底線」(ボトムライン)まで教えたというからまさに第2の張治中だ。

     中国が張顕耀を張治中のように台湾政府に潜らせていたのだとしたら、狙いは明白。両岸交渉を
    中国に有利に進め、悲願の統一の早期実現だろう。だが、スパイ発覚でその目論見は失敗し、その
    代償は極めて大きい。これで台湾側の反中感情はさらに高まり、今後の経済協定でさえ締結は極め
    て困難。現に野党側には過去の協定のやり直しを求める声もあり、統一は夢のまた夢になってしま
    う。

     傾中路線とも揶揄される馬英九政権が、自らスパイ事件を公表するのは、自分の首を絞めるよう
    なものだ。だからこそ、当初は「家庭の事情」を理由にして真相を隠そうとしたのかもしれない。
    なのに張顕耀が反発したので、事実を言わざるを得なくなった? それにしても中国はなんらかの
    反応を示すはずだが、いまだにコメント一つさえないのはなぜ? あるいは中国自身、事件の真相
    が分からない、つまり中国が放ったスパイではないからか?

    ◆事件で誰が得をするのか?

     事件発覚以来、メディアでは様々な分析、解説がされ、馬政権の権力闘争説もある。だが、反馬
    勢力が馬英九を追い落としたとしても、国民党の信用失墜になるから、可能性は小さい。逆に馬英
    九が仕組んだというのも事件で支持率低下は不可避だから、ありそうもない。張顕耀は国民党から
    親民党に移った。そこから馬英九の宋楚瑜追い落としとの説もあるが、今の宋のそれほどの力はな
    い。事件は混迷を深め、藪の中だ。

     推理小説が教えるのは「犯人を探すには、事件で得をする人を探せ」だ。では事件で誰が得をす
    るのか。統一の夢が遠退いてしまうのだから中国ではないだろう。前述のように馬英九でもない。
    民進党はどうだろうか。11月の選挙を前にこの事件は確かに民進党に有利だろうが、野党が仕組ん
    で法務部が動くだろうか。

     では、誰? 「一人、いますよ。それは米国」という解説する人もいる。台湾政府上層部に中国
    のスパイがいたということになれば、それでなくとも中国嫌いが増えている台湾人の中国離れはま
    すます進む。つまり台湾は中国との統一に向かわない。これは米国にとってアジアでの勢力を維持
    するうえでは大事なことだ。

    ◆謎解明には長い時間が必要

     それでなくてもオバマ政権の2期目の対中政策は以前の米中友好ムードから様変わり。尖閣諸島
    問題、さらには南シナ海の問題では、中国に批判的な姿勢をとっている。このまま中国のアジアで
    の軍事拡大を許せば、アジアでの米国の威信低下は必定。そこへ台湾が中国と統一なんてことにな
    れば、東シナ海、南シナ海は中国の海になってしまう。

     米中両大国の狭間にある台湾は自分の思いとは関係なく、国際政治の荒波に揉まれる宿命にあ
    る。張顕耀は「私は知り過ぎた」と言った。何を知ったのか? 「非常に怖い」とも言った。それ
    は命の危険があるということなのか? 米国説も含め事件は「?」だらけ。すべての謎を解明する
    には馬政権のかなりの頑張りが必要だ。

                              





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