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  • 2014年5月21日水曜日

    「台湾の声」【反響】ベトナムの台湾企業が攻撃された理由

    【反響】ベトナムの台湾企業が攻撃された理由

    坂田様の投稿を拝見しました。

    NHKの無責任ぶりを明らかにしてくださってありがとうございます。非常に悪質ですね。NHKが、その説明どおり「中国政府」をニュースソースにしているとすれば、台北支局は何をしているのかと疑われます、あるいは、台北支局は仕事をしたが、情報の集約ができていないということなのかもしれません。もしくは、われわれ視聴者を馬鹿にして、いい加減に答えている。

    まず、「2名の中国人が死亡」とのニュースについて、台湾人なのではないかと心配されたのではないかと推測しますが、台湾の報道では死亡した職員を「陸幹」、つまり中国籍幹部と呼んでいますので、これを中国人と呼ぶことは適切であると考えられます。いずれにせよNHKは、坂田様の質問に対して真摯に回答するべきだと思います。

    宮崎正弘氏が記事中で紹介された、「現地の台湾企業内での"気をつけろ"表示が繁体字ではなく簡体字であった」ことが、台湾企業が攻撃された原因であるという見方について、台湾のメディアで論じられている別の見方を紹介させていただきます。

    <現地台湾企業と中国人・ベトナム人との関係>

    まず、そもそも台湾企業がベトナムへ進出するパターンのひとつとして、先に中国に進出し、さらにベトナムへ進出したため、中国で雇用した中国人を幹部としてベトナムに連れてくるなど、「中国」に依存したままでベトナムへ進出するというケースが多いといわれています。

    そのベトナムの台湾企業で2名の中国籍職員が死亡した件についての台湾発の報道をまとめると次のようになります。

    ハティン省にある、台塑(フォルモサ・プラスチック)ハティン製鉄所では14日、千名近くの暴徒が押し入り、90から100名の中国籍幹部が負傷し、うち一名が死亡した。

    ビンズオン省で自転車のサドルを製造している「鋒明企業」(DDKグループ)では、13日に工場が放火され、製造機械の修理に来ていた中国籍の職員と連絡が取れなくなり、後に、焼死したことが確認された。

    注目されたいのは、フォルモサ・プラスチックのハティン製鉄所では約100名の中国籍幹部が負傷したという部分です。また、この製鉄所の工事は中国企業が請け負ったと報じられています。

    つまり、ベトナム人労働者にとって、台湾資本が中国人を使って自分たちを搾取している、あるいは、台湾企業の進出で自分たちに利益がもたらされておらず、中国人が利益を得ている、というような、日頃の不公平感が今回の暴動の下地となったのではないかということです。負傷した中国人幹部が100名近くいるというのは、全体の規模にもよりますが、かなりの人数を雇用していることになります。

    <台湾のひとつの中国政策>

    もうひとつは、当然、馬英九の責任です。台湾と中国とが別の国であるという事実を曖昧にしてしまいました。台湾におけるベトナム研究の専門家でもある蒋為文教授によれば、ベトナムはこの5月より、台湾人へのビザの国籍欄への表記を「台湾」から、「China (Taiwan)」に改悪しているというのです。これは馬政権が、台湾を中国とは別のものとしてアピールする外交努力を行っていないためにちがいありません。

    15日の台湾の立法院国防外交委員会では、外交部長・林永楽が野党の批判にさらされました。政府は「私は台湾人です」とベトナム語で書かれたステッカーを対策として作成しました(のちに文法が間違っていると指摘された)。

    これについて、民進党の管碧玲・立法委員は、ベトナムの教科書では「台湾は中国の一省」と教えられていることを示し、シールを作るのであれば、「われわれは台湾企業であって、中国企業ではない」と訴えるものでなければベトナムに駐在する台湾人を守ることができないと批判しました。

    <簡体字?>

    宮崎先生が指摘された、簡体字と繁体字(台湾では正体字と呼ばれる)の問題は、まず、Windows XPが普及しきったこの時代に、「現地で仕入れたパソコンだから、正体字で印刷できない」はずはありません。

    台湾の人たちと一緒に活動をしていればしょっちゅう見かけられることですが、台湾の人たちが台湾で購入した機械のメニューが簡体字のままになっていて台湾の人たちがそのまま使っている例はたくさんあります。それに、中国人職員が多いのかもしれません。

    台湾でも、外国人向けの中国語教育には簡体字を用いるようになってきています。外国人が中国語を学ぶとき、国連の公用語のひとつにもなっている簡体字表記の中国語を学びたいというニューズに答えるためです。ですから、台湾が行っている中国語検定試験も、海外の受験生は簡体字併用版を受験することができるようになっています。

    私たち日本人は、漢字を使っているので、簡体字と「正体字」の違いが分かりますが、それをベトナム人に当てはめることはできません。ちなみに、台湾では、日本のものであることをアピールするために、あるいは日本人向けの文書に簡体字を使うということもたまに見られます。日本の漢字の新字体と中国の簡体字の区別がついていないわけです。

    <母語?>

    台湾で現在、国語とされているのは中国語です。中国の中国語とは、確かに、イギリス英語とアメリカ英語くらいの違いはあるかもしれませんが、アメリカで用いられているものも英語と呼ばれるように、台湾で「中華民国」を名乗る政府により国語とされているものもやはり中国語なのです。

    これは台湾人の母語ではありません。台湾人の母語といったときに典型とされるのは、台湾語(ホーロー語)やハッカ語、および原住民の諸言語です。

    「中華民国」(Republic of China)を名乗る政府は、その名称が示すように、自らを中国だと考えるのが当然でしょう。国語とは中国語のことなのです。「中華民国体制」というものがもしなかったら、北京語とも呼ばれる言語が、台湾の国語とされることはないのです。

    <正体字は台湾を守れるか?>

    中国の全人代では2009年より、「繁体字を回復する」という提案が行われています。これは台湾を視野に置いた提案だと見られています。コンピュータの利用が身近になった今日、中国人が「繁体字」の文書を作ることはそれほど難しくなくなりました。中国はいつでも「繁体字を回復」できることでしょう。

    したがって、「正体字」で表記される中国語によって台湾民族を守れるなどという考えは、まやかしにすぎません。逆に、そのような頼りにならないものを頼りにすることで、本来守るべき台湾の母語を守ることがおろそかになってしまう危険性が高いのです。

    台湾人が「中華民国」体制を打破しようとするちからは、つねに台湾人の一部にある敗北主義が、両岸の中国人につけこまれて、分散されてきました。

    たとえば、謝長廷氏らが、党綱領の志を捨て、中国を含む「中華民国」の虚構に台湾を入れることで、中国の国民党支持を変えることができると考えるのもこのようなものです。
    あるいは、林志昇や、そこから分かれたとする「米国台湾政府」集団が、台湾の中で力を結集して「中華民国」体制に対決するのではなく、米国にお願いすることが正しいことだとして、台湾派の力を分裂させているのも、台湾が抱える苦しみです。

    中国に反感を持つ台湾人が、簡体字を嫌悪することは、自然なことですが、台湾民族を守るのは、「正体字」で書かれた中国語ではなくて、台湾の母語なのです。運動の目標は正しく設定されるべきです。

    <まとめ>

    今回の事件は、(1).ベトナムと中国の領土問題および、(2).ベトナム人が外資企業との間で感じている社会経済的問題、そして(3).台湾政府が中国と違う国だと主張していない問題が主な原因であり、正体字か簡体字は台湾企業が攻撃を受けた直接的な原因というよりかは、(3)に関係する現象としてとらえるべきものだと思われます。

    多田恵(日本台湾語推進協会事務局長)


    『台湾の声』http://www.emaga.com/info/3407.html

    2014.5.18 11:00



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