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  • 2014年5月21日水曜日

    「台湾の声」【傳田晴久の臺灣通信】「核四と公投( 1 )」

    【傳田晴久の臺灣通信】「核四と公投(1)」
    2014年5月9日



    1. はじめに

    「太陽花學運(ひまわり学生運動)」は世界中の賞賛を受けましたが、その大騒ぎが一段落したと思う間もなく、今度は「核四」を巡る騒動で台湾は賑わいました。台湾の原発は現在第1発電所〜第3発電所で合計6基が稼働中で、建設中が第4発電所の2基があります。この第4発電所を「核四」と呼び、その建設中止を求めて学生や市民が座り込みやハンガーストライキを実施したり、さらに「核四」の可否を「公投(公民投票)」で決めようとの要求が出されたりしています。

    原発の可否は大変難しい議論ですし、それを公投で決めようというのも大変難しい話です。今回の台湾通信はこの「核四と公投」を巡って考えさせられたことをお伝えいたします。

    2. 台湾のエネルギー事情

    台湾の人口は約2,300万人、面積は36,000�(九州よりやや小さい)、2013年の国内総生産(GDP)は4,892億ドル、1人当たりGDPは20,930ドルであり、2013年の経済成長率は2.11%という。経済成長と共にエネルギー消費量の増加も著しく、年平均増加率は4.28%(1990年以降)であるが、エネルギー供給はエネルギー資源が乏しいためにほとんどを輸入に頼っており、2003年以降のエネルギー輸入率は99%を超えている(エネルギー自給率は0.61%)。

    エネルギー資源別の供給量(石油換算)を2010年度の統計でみると、輸入は石油49%、石炭32%、液化天然ガス9.9%、原子力8.3%、以上で99.39%、残りが国内生産エネルギーで、水力、液化天然ガス、太陽熱、太陽光&風力、石油で合計して0.61%である。(経済部能源局のデータによる)

    燃料別発電電力量を見ると、石炭が約50%、天然ガスが25%、原子力が17%、石油4%、水力3%、残り1%が風力、太陽熱、バイオマス、廃棄物である。
    一方、電力消費を部門別にみると、工業部門53.8%、運送部門12.9%、サービス部門11.0%、住宅部門10.7%、エネルギー部門7.0%、非エネルギー部門3.8%、農業部門0.8%である。

    要するに経済成長とともにエネルギー消費量は年々増加しているにもかかわらず、台湾はエネルギー資源に乏しく、そのほとんどを輸入に頼っているのである。

    3. エネルギー政策

    台湾の原子力発電は、1978年12月に第1発電所の金山1号が運転開始、以降1985年5月までの8年間に金山2号、第2発電所の国聖1、2号、第3発電所の馬鞍山1、2号が次々と運転開始し、現在6基の原発が稼働している。台湾の総発電電力量に占める原発の割合は、1987年に約48%に達したが、人口密度の高い島国での原子力事故が懸念され、放射性廃棄物処理問題もあり、2002年10月、民進党政権は再生可能エネルギーに力点を置くという「非核国家推進基本法案」を閣議承認し、2011年から2017年までに既存の3基の原子炉を停止し、環境負荷の低いLNGと再生可能エネルギーに換えるという方針を打ち立てた。

    しかし、2008年に国民党政権が誕生し、非核国家構想を見直し、エネルギー安定供給と低炭素社会実現には原子力も一つの選択肢とするという見解を示した。しかし、日本の福島原発事故(2011年3月)発生を受けて、台湾では原子力リスクに対する関心が一気に高まった。既存の6基の原発稼働終了時期は、金山1号が2018年、2号が2019年、国聖1号が2021年、2号が2023年、馬鞍山1号が2024年、2号が2025年となっているが、その終了時期延長には慎重な態度が示されている。第5原子力発電所以降の建設計画は撤回されている。
    建設中の第4原子力発電所(龍門1、2号機)の建設続行を巡って、工事中止を求める大衆運動が行われていた。

    4. 「核四」建設中止要求

    陳水扁政権時代に原子力エネルギーを再生可能エネルギーに換えるという方針を立てたが、馬英九政権になって、再び原子力エネルギーを容認する政策に変わったが、福島の事故以降、反核が一段と叫ばれるようになっている。日本からも反核を訴える人士が度々台湾を訪れている。先月(2014年4月)15日、元民進党主席林義雄氏が反核を求めて「禁食」(ハンガーストライキ)実施を宣言しました。そして22日から義光教会で「禁食」に入りました。その間、民進党は「核四公投特別条例」を提案したり、与野党の有力政治家が色々な活動を展開しました。

    馬英九総統は安全検査を先ず実施し、その後で公投を行うと主張し、林義雄氏は核四建設停止、公投の実施を立法院、行政院で決めよと主張してやみません。

    4月27日に原発停止を求める5万人集会が開かれました。この日、馬英九総統と国民党は核四の2号機の工事停止を決定しました。

    4月30日、遂に林義雄氏は「禁食」停止を宣言しました。

    5. 「核四全面停工」で良いのか?

    日本でもそうであるが、台湾でも原子力エネルギーを廃した場合の代替エネルギーには「再生可能エネルギー」(あるいは代替エネルギー、自然エネルギーとも)が挙げられている。

    台湾の場合、第1発電所の金山1号(出力64万kw)は2018年で終了、同2号(出力64万kw)はその翌年、第2発電所の国聖1号(出力100万kw)の終了は2021年、同2号(出力100万kw)は2023年で終了、第3発電所の馬鞍山1号(96万kw)は2024年、同2号(96万kw)は2025年に終了することになっている。すなわちあと10年で520万kwの原子力発電所の能力がなくなるのである。

    日本で2月に行われた東京都知事選挙において、元総理細川護煕氏が元総理小泉純一郎氏の支援を受けて、「原発即ゼロ」を訴えて立候補したが、大差で敗れた。問題は彼らが主張した「�原発即ゼロに対応する代替エネルギーは必ず知恵のある人がいい案を作ってくれる」、「�核の処分場が見つからないから原発即ゼロにすべき」という事であったが、雑誌「正論」平成26年4月号に北海道大学大学院教授奈良林直氏が徹底的にその主張を論駁している。

    「知恵のある人が云々」はどこかで聞いたような話、昔中国のトウ小平氏が、「釣魚島問題の解決はもっと知恵のある次世代に託そう」と言ったとか、結局海軍力増強の時間稼ぎに使われたのではなかったか。

    奈良林教授は�について、日本では1973年のオイルショックを受けて、産官学の大規模な「サンシャイン計画」(4,400億円)、「ムーンライト計画」(1,400億円)、さらに1993年から「ニューサンシャイン計画」(15,500億円)が行われ、新エネルギー、省エネルギー技術、環境対策技術開発研究に巨額の資金が投入されたが、40年間にわたる壮大な研究開発を経ても、原子力や火力発電以外の分野での基礎エネルギーとなる発電技術の開発が困難で有る事を示している、と述べておられる。�についても小泉氏らの主張に反論している。詳しくは「正論」をご覧いただきたい。この巨額の投資は無駄であったという評価ももちろんあるが、これだけの時間と金をかけても「再生可能エネルギー」の開発は難しいとも言えるのではないか。

    今、台湾では「再生可能エネルギー」の開発はどのように行われているのだろうか。

    6. おわりに

    台湾は日本の九州より少し狭い地域に現在6基の原発が稼働しており、その中の4基(第1、第2発電所)は台北市の北30�と離れていない位置にあり、第3発電所は高雄市の南80�の位置にある。問題の核四(第4発電所)は台北市の東40�にある。いずれも大都市に近接した原発であり、日本の東日本大震災に伴う福島原発事故以来、神経質にならざるを得ないことは十分理解できるが、上にのべたように電力需給状況、特にエネルギー資源のほとんどを輸入に頼っている事を考えると、代替エネルギーの実現可能性に疑問がある段階で、即時原発廃止を決定するのは如何なものであろうか。

    核四の可否を公投で決めようという動きがありますが、これについては次号で検討したいと考えております。

    尚、台湾の電力需給状況、原発の実情については、一般財団法人高度情報科学技術研究機構(RIST)の原子力百科事典ATOMICAなどを参考にいたしました。
    (文責在傳田晴久)





    『台湾の声』http://www.emaga.com/info/3407.html

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