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  • 2014年2月7日金曜日

    「台湾の声」【傳田晴久の台湾通信】「台湾民政府」詐欺にご注意を 

    【傳田晴久の台湾通信】「台湾民政府」詐欺にご注意を 


                 傳田晴久


    ◆はじめに

     以前、「台湾通信」No.45「信不信由?(信じる信じないはあなた次第)」(2010年5月
    28日付け)で、台湾地位未定論を紹介しました。

     2009年5月に当時の日本交流協会駐台代表の齋藤正樹氏が「学術研討会」の席で「台湾地
    位未定論」を発表し、馬英九政府の厳しい反発を招きました。そのころ私は「60年間、隠
    蔽された『台湾国際地位』の真相」という資料を入手し、林志昇という人の存在を知りま
    した。彼らは台湾地位未定論を根拠に「台湾民政府」という組織を設立し、いろいろな活
    動をしていますが、彼らの主張や行動は我々をびっくりさせるものです。

     資料を収集して読み進めるうちにちょっと何か変だな、と思うようになりました。彼ら
    が主張していることはすべてではありませんが、論理的であるし、納得できるものです
    が、やっていることは何となく胡散臭い思いがするのです。どうやらこの林志昇並びに
    「台湾民政府」は問題がありそうです。

     今回はこの林志昇という人と彼らが設立したという「台湾民政府」の活動について述べ
    ます。

    ◆台湾地位未定論とは?

     「台湾通信」No.45で台湾地位未定論を紹介しましたが、その概要は次の通りです。

     台湾が日本の領土になったのは1895年の下関条約により、清国が台湾を日本に割譲した
    からで、日本は台湾の主権を取得しました。しかし、日本は1945年 8月に大東亜戦争に負
    け、降伏、9月にマッカーサー指令で中華民国蒋介石軍が連合国を代表して台湾を占領しま
    した。その中華民国は1949年 中国の内戦で中国共産党に破れ、台湾島に逃げ込みまし
    た。1952年 サンフランシスコ講和条約により、日本は台湾の主権を放棄、しかし、台湾
    の帰属については触れなかったので、その主権は宙に浮いた状態になりました。1971年、
    中華民国は国連を追放され、中華民国は滅亡しました。

     サンフランシスコ平和条約第4条b項と第23条に「米国は日本及びその植民地の主要占領
    国であり、その処分と支配権を有する」と明記されているそうです。すなわち、国際法上
    中華民国は台湾の主権を持たないし、況や1949年建国の中華人民共和国が台湾の主権をも
    つはずもなく、換言すればサンフランシスコ平和条約締結までは台湾は日本に帰属してい
    たということです。

    ◆林志昇の主張

     台湾民政府「天皇陛下聖誕祝寿団並日本靖国神社慰霊祭」西元2012年というタイトルの
    パンフレットをある方から頂きました。これは台湾民政府の人々が昨年(2012年)の暮に
    日本を訪問した際の資料で、訪問団の名簿や訪問の趣旨などを記したもので大変立派な装
    丁の物です。

     その中に、「日本人の『台湾帰属の認識』は誤っており、即刻訂正すべし」との主張が
    あり、"国際戦争法の専門家"(だそうですが)林志昇氏の考え方を縷々述べています。
    その文言を列挙しますと……。

    1)台湾は現在「国際地位未定」であり、「主権独立国家」ではなく、中華民国の領土で
      もない。したがって「台湾」と「中華民国」は混同すべきではない。

    2)台湾は日本の植民地ではなく、日本天皇の神聖不可分の国土である。

    3)日本は、戦後から今に至るまで台湾の「領土主権」を放棄していない。

    4)台湾には今なお日本天皇が主権権利を行使できる「大日本帝国憲法」すなわち「明治
      憲法」が存在し、廃棄されていない。

    5)台湾人は無国籍である。台湾には「台湾人」や「外省人」は存在しない。

    6)台湾に存在する「国民党」も「民進党」も中華民国亡命国の政党であり、本土台湾人
      を代表する資格はない。

    7)台湾住民に「正名、制憲」や「住民自決」の住民投票は不可能。

     以上の各項について、1895年4月の下関条約(前出)、1937年の皇民政策、1945年4月1日
    の昭和天皇の詔書(台湾に明治憲法実施の宣布)、1945年9月2日(マッカーサー将軍の
    「一般命令、第1号」)、同年10月25日の台湾光復節(偽称)、1952年発効のサンフランシ
    スコ講和条約、2009年4月米国連邦高裁の判決(64年来本土台湾人は無国籍)などを根拠と
    して示し、素人には難しい法律論を展開し、真偽はともかく論述しています。

     特に2項、3項、4項については難しい法律用語、英語を駆使しながらの論理展開であ
    り、俄かには信じ難いものがあります。

    ◆「台湾民政府」の活動

     前出のパンフレットによれば、「本土台湾人は2008年2月2日に国際戦争法の『自衛権』
    に基づき、台北で『台湾民政府』を成立させ、直後に全世界194か国に向け、その旨通達し
    た」と書いてあります(しかし、何カ国が承認したかについての記述はなし)。

     そして2010年7月、台湾民政府は駐米ワシントンDC弁事処を設立、同年11月台北で「台
    湾民政府内閣」が成立、主席、国務総理などを決め、日本統治期の制度を復活させて、7つ
    の州(宜花東州、台北州、新竹州、台中州、台南州、高雄州、中央原住民州)を成立さ
    せ、運用を開始した。

     さらに2011年12月21日、台湾民政府閣員150名が日本の靖国神社参拝、同月23日に皇居前
    の天皇誕生祝賀会に参賀、翌年の2012年暮には220名が同様に靖国参拝、天皇誕生日の参賀
    を行ったと言います。

    ◆反論ないし否定論

     メルマガ「台湾の声」は2013年4月28日「天皇陛下まで利用しようとする集団『台湾民政
    府』林志昇カルト集団に注意!」として、長文の注意喚起を行っていますが、それによると
    彼らは次のような活動を行っていると言います。

    1)台湾民政府のパスポートを発行(5000台湾ドル)

    2)台湾民政府の(国民)身分証(1000台湾ドル、この身分証を提示すれば米国ビザ取得
      のための面接が不要になる)

    3)台湾民政府の公務員になるための有料講習会(2日間の受講料6000台湾ドル)

    4)天皇陛下を参拝して国民の義務を果たす(数万台湾ドル)

    5)中華民国体制を批判し、選挙ボイコット活動推進

    6)陳水扁前総統救出活動(新聞広告、ホワイトハウスに対する請願ネット投票)、等々

     そして同メルマガはこれらの活動に対して、台湾のテレビ報道や警察は詐欺の疑いがあ
    るとして警告を発していると述べています。

     また中天テレビ局はニュースで、林志昇が身分証があれば、ビザ取得のための面接が
    「不要」との説明画面と米国ビザ発給職員の面接は「必要」という画面を対比しながら、
    この嘘を暴いていると指摘し、一方、台湾各地の警察が身分証詐欺への警戒を呼び掛け、
    その中の台南市の警察は宣伝用のチラシに「これは詐欺です。被害に遭わないように警戒
    してください」という注意書きを入れてインターネットで公開したと言います。

    ◆何が胡散臭いか

     私は「台湾地位未定論」や「台湾民政府」に興味をもちましたが、何となく胡散臭く感
    じたのは、パンフレットの表紙に天皇・皇后両陛下のお写真と日の丸、台湾民政府の旗、
    その裏にオバマ大統領夫妻、皇居、その下に詔書の写真、裏表紙には大東亜戦争従軍記章
    や旭日旗、その裏には4本の旗を先頭にして靖国神社に入場する団体の行進写真が掲載さ
    れていたからです。もちろん各々の写真に意味を持たせているのでしょうが、私は違和感
    を持ちました。

     そして、パンフレットの第1頁に台湾民政府の主席、副主席、委員、州長などの名前と
    訪日団のリストがありました。肝心の林志昇氏の名前の後ろには「執行長。拒領ROC護
    照滞台」の文字がありました。意味は「執行長。ROCすなわち中華民国のパスポートの
    受領を拒み、台湾に留まる」ということでしょう。

     バスを連ねて皇居や靖国神社に出向いたようで、バスの号車別の名簿が記載されていま
    すが、その中に林志昇の名前がありません。なるほど台湾民政府の主席は別の人でもいい
    でしょうが、民政府の理論的支柱は林志昇氏ですから、彼が訪日団に入っていないのは解
    せません。

     中華民国のパスポートが嫌なら、台湾民政府が発給するというパスポートを使用すれば
    いいのではないか。これで私はすっかり「これはおかしい」と感じた訳です。前述のメル
    マガ「台湾の声」は「林志昇は税金滞納により出国が禁止されている」と紹介しています。

    ◆たまたま見つけた台南州の台湾民政府オフィス

     林志昇氏並びに台湾民政府にかかわる資料をいただき、関心をもち、いろいろ資料を集
    めたり、友人知人に尋ねたりしていましたが、あまり関心を持っている方には出くわすこ
    とがなく、林志昇氏に関する否定的な情報が多かったように思いました。

     そんな矢先、たまたま友人の車で台南市内を移動中、たくさんの旗を林立させたド派手
    な建物が目に入りました。見ると、その建物の正面に大きな文字で「台湾(民)政府」と
    書いてあるではないか。

     後に一人で見に行き、写真を撮り、近づいて掲示板にいろいろ張り紙がしてあるのを見
    ていますと、中から人が出てきまして、何やら話しかけてきました。私はとぼけて日本語
    で「何ですか」というと、「あぁ、日本の方ですか」といい、あとは中国語でいろいろ説
    明を始めました。

     なんでも今年の8月15日に台湾民政府は250人の訪日団を編成し、靖国神社を訪問し、祀
    られている台湾人3万余人の英霊のお参りをするとのこと。私はすかさず、「林志昇氏も行
    かれるのですね」と尋ねると、「いや、彼は行きません」とのこと。理由は、彼は台湾人
    で、中華民国を認めていないので、中華民国のパスポートは使わないとのことでした。こ
    こで引き下がってはつまらないので、「台湾民政府が発給するというパスポートで行かれ
    たらいかがですか」と言いますと、敵もさるもの、すかさず「台湾民政府は未だパスポー
    トを発給していません、今その準備をしているところです」とのことでした。

    ◆おわりに

     この「台湾通信」に林志昇氏並びに台湾民政府について記述することは、彼らの行動、
    詐欺まがいの活動を支持ないし支援することになるのではないかとの危惧があり、書いて
    いいものかどうか逡巡しました。

     ある知り合いの方に「台湾地位未定論」について尋ねると、「理屈はOK、正しいだろ
    う。しかし、台湾は国民党が実効支配している。竹島もしかり。普通の方法ではどうにも
    ならないのではないか」と仰る。「台湾民政府」についても何人かの人々にお伺いしまし
    たが、いずれも歯牙にもかけないという感じでした。

     さらにメルマガ「台湾の声」の注意喚起の記事を読み、自分が感じた「胡散臭さ」が裏
    付けられた思いでした。

     いずれにせよ、「台湾通信」の趣旨は、私が台湾で見聞きした事柄を友人たちにお伝え
    することですので、このテーマを取り上げました。




    『台湾の声』 http://www.emaga.com/info/3407.html

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