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  • 2008年11月9日日曜日

    「台湾の声」【論説】台湾馬総統の本性

    【論説】台湾馬総統の本性

             時局心話會代表 山本善心


     このところ、馬英九総統に対する内外の批判が厳しい。9月の下旬に台湾
    から4人の経営者がやってきたが、その中に、今年2月の総統選で馬氏を応
    援したK氏もいた。氏は、台湾経済が中国次第なので馬氏を応援したという。
    ところが「馬総統になってから、台湾経済は本当に駄目になった。まだ陳水
    扁前総統時代のほうがよかった」と失望している。

     2006年の実績として、K氏はこう述べている。「台湾は中国に対して年間
    40%近い輸出があり、台湾の貿易黒字は約500億ドル(5兆7000億円)
    もあった。また台湾企業の海外投資のうち、70%は中国だ。台湾は中国に
    経済を依存しているので、政治がもっと効率的で便利な政策と関係改善を
    優先してもらいたかった」

     馬氏は中国との関係改善を約束し、�中台直行便の定期化、�中国人
    観光客の受け入れ拡大、�人民元の流通緩和をうたった。しかし政治の無
    策と、その後起こった石油の高騰、不動産・株価の下落、米国発の金融危
    機、中国経済の人件費の高騰、物価の上昇、消費の停滞が重なった。台湾
    経済は壊滅的状況を呈しつつあり、馬政権は大ピンチに陥っている。

    ●馬氏の不人気

     さらに10月下旬、馬総統と親しいという経営者が台湾からやってきた。彼
    も馬氏を支持した1人であるが、今台湾では、馬総統の名前を出すだけで
    拒絶反応を示す人が多いという。イケメン、スタイリスト、口先だけは立派で
    あるが中身のない総統だ、とあきらめ顔だ。

     台湾経済界や台湾人は、馬政権の政策とリーダーシップが悪いから経済
    悪化を招いたと本気で思っている。毎日3000人を誘致すると公約していた
    観光客数も、今では1日100人前後だと聞く。

     支持率低下という最悪状況の中で、馬政権は経済悪化の矛先をどこかに
    向ける戦略と工作が必要であった。近いうちに何かが起こると考えた筆者は、
    定例会でもそれを強調した。


    ●尖閣を政治問題化


     尖閣諸島は、日本が実効支配している固有の領土である。そこに台湾の
    領有権を主張する活動家を乗せた抗議船3隻が不法侵入する。6月10日、
    台湾の遊漁船「聯合号」と海上保安庁の巡視船が衝突事故を起こしたのだ。

     ところがこの漁船が沈没したので、台湾メディアが大騒ぎし、国民党の議
    員はその事件を政治問題化した。なかでも行政院長は「日本との戦争も辞
    さない」と議会で答弁。総統の不人気を尖閣問題とすり替える格好の戦術を
    用いた。

     このように馬総統の日本への強硬姿勢が、「反日」と指摘される要因の一
    つだ。親日派の李登輝元総統の、尖閣問題に対する意見はどうか。9月24
    日に沖縄を訪問した際、知事らとの昼食会の席上で、李元総統は「私に言わ
    せれば、尖閣諸島は日本の領土である」「漁業権とは関係なく、政治的にや
    っているだけで、(日本は)神経質にならない方がいい」と発言した。


    ●馬総統は反日政治家


     弊誌38号でも述べたが、2001年3月、台北市で弊会主催の日台研究会
    が行われた。当時市長だった馬氏は、一行80名(国会議員25名を含む)を
    台北市庁広場に招待。「日本は侵略国家であり、靖国神社の参拝にも反対
    する」と強調した。

     馬市長は初めの挨拶で日本の戦争犯罪に触れ「日本は過去の歴史を鑑
    として深く反省すべきである。靖国神社参拝は(台湾人)被害者の心を深く
    傷つけるものだ」と、えんえん30分以上にわたって日本批判を繰り広げた。
    これは中国とまるで同じ反日発言であり、「何と非常識で無礼な市長なのか」
    と参加者全員は不快な思いをする。

     日本の国会議員の前で日本の先人を侮辱し、かつての戦争を悪と断定す
    るのは、招待側としてあまりにも非礼な態度といえよう。馬総統は月刊「世
    界」の11月号でも「私たちは日本が過去に戦争を発動し、東アジア、また東
    南アジアにおいて多くの植民(地支配)と侵略(戦争)を残したと理解していま
    す」と述べた。


    ●「中国と台湾は中華民国領土」


     このように日本に必要以上の憎しみを持つ馬総統であるが、それを批判さ
    れると「日本重視」と態度を豹変させ、まるでシチメンチョウのようだ。さらに
    日本人記者を集めて「日本と台湾は特殊なパートナー関係である」と言い訳会
    見を開く。

     筆者と交流のある大方の中国人は、馬総統の名が出るだけで不快な表情
    を見せた。それにはいくつかの理由がある。まず馬総統は事あるごとに中国
    の自由と民主化、人権問題に触れて「中国民主化の遅れは、今後の中台対
    話の障害になりうる」と発言。さらに「台湾の民主化が中国にも寄与する」との
    認識を表明し、中国政府の感情を逆撫でしている。

     先の月刊「世界」誌上でも「…中華民国は当然ながら独立した主権を有す
    る国家ですし、中国大陸も私たち中華民国の領土です」「憲法の規定の関
    係上、大陸を一つの法理国家として承認することはできません」と明言して
    いる。筆者は昨年来、馬氏の本音をこのように指摘してきたが、本人が雑
    誌で主義主張を明確にしたことでそれを裏付けた。


    ●「台湾は一つの地域」


     李元総統は中国との関係を「国と国の関係」としたが、陳前総統は「一辺
    一国」の概念を明確にしている。馬総統は「中華民国は台湾と中国大陸を
    それぞれ一つの国家として認めない」と定義した。つまり台湾も大陸も中華
    民国の領土であり、もう一つの国家が存在することは承認できない。つまり、
    中華民国統治による一つの中国というわけだ。

     台湾が国でないとすれば何なのか。月刊「世界」で馬氏の答えは次の通り
    である。「台湾を単なる『地方の市場』にとどまらず、『地域の飛び板』と見な
    すようになりました。米国商会や欧州商会(台北駐在の各国商工会議所)な
    どは、いずれもこのように考えています」、つまり欧米にとって、台湾は地域
    のオペレーションセンターだという。それは「台湾は憲法に定められた、中華
    民国の一つの地域だ」とする馬総統の考えと一致するものだ。

     さらに9月3日メキシコで、インド記者の質問に対して「台湾は一つの地域で
    あるが国ではない」と明言した。これは台湾人にとって承服できない問題であ
    り、非現実的で矛盾しているとの台湾世論が動きはじめた。


    ●裸の王様


     つまり台湾でもなければ中国でもない、実態のない中華民国の総統が突然
    「中国と台湾は中華民国の領土だ」と言いだしたのだ。台湾の若者たちの間
    で「馬総統はおかしいのではないか、なぜ今さら中華民国なのだ」という声が
    広がりを見せている。

     若者たちから見れば、台湾はすでに法の下で、国家として民主的に運営・
    統治されている国なのだ。今までは中国がうるさいから「現状維持」と言って
    いるだけで、立派な独立国家なのである。

     馬総統はお坊ちゃま育ちの正直者で、人間としてクリーンであり、本音を言
    う人だ。悪い人ではなく裏もないからぺらぺらしゃべりまくるので、見る人が見
    ると、心の底から馬鹿だと思われても仕方がない。しかし国家のリーダーとな
    れば軽率な発言は許されないことだ。賢い中国は馬総統の動静を見ているが、
    今のところ相手にもしていない。


    ●台湾人トップの資格


     台湾国民は経済の発展と共に「主権維持」に過敏である。台湾人の大部分
    は本省人(約85%)の血筋だといわれている。台湾で民主的な手段で総統
    が選ばれ、民主的な統治がなされている限り、台湾人に都合の悪い政策は
    受け入れられない。馬総統が前近代的な発想や法理を持ち出しても、世界
    各国からも理解されまい。世界の目は「中華民国」ではなく「台湾」に向いて
    いる。

     日本国内にも中国の危機説をあおる論者が後を絶たないが、中国はすで
    に次なるステップに戦略転換している。日台に対する武力威嚇、反日デモ、
    台湾を威嚇で封じ込める戦略から、「融和路線」へと大きく舵を切った。これ
    までの戦略では嫌中感情を高める結果にしかならない。また今迄李元総統
    の訪日を「封鎖」したことも、反中感情をあおり国際的イメージを低下させる
    だけであった。

     台湾世論は、馬政権に大きな期待を寄せたものだ。しかしその政策と政
    治能力に思いつきやその場しのぎが目立つ。尖閣、歴史認識では反日姿勢
    を示し、「中国は中華民国の領土、台湾は一つの地域」との見解を表明する
    など、今や台湾トップとしての資格と見識が問われていまいか。

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